サヨナラだけが人生だ!:KUSHITANI名東店
バイトちゃんが卒業して二週間近く経ちます。
もう先月くらいから常連さん達に、「店長・・バイトちゃんロスで大変だろうね〜〜」などとかからかわれてました。
その都度「はぁ??そんなこたぁねぇよ!!」と答えてましたし、実際そんなに寂しさを感じることなんてないと思ってんですけどね・・・
実際のところこんな感じで常連さんにカツを入れられていますwwww
*愛犬家の皆様。これはあまりに腑抜けてる僕にカツを入れるための愛ある比喩ですのでご容赦をww
これはバイトちゃんにも話してなかったことなんですけど、長らく僕一人だけでやっていたこのお店でアルバイトさんを募集し始めたのは実に単純なキッカケでした。
ある晩、僕は映画版「深夜食堂」のDVDを観ていました。
あの映画ご覧になりました??
渋いマスターが一人で切り盛りする食堂に、多部未華子ちゃん演じるみちるちゃんが、無銭飲食したのをきっかけにマスターに拾われ、深夜食堂の一員としてちょっとづつ常連さん達に受け入れられていく様子が描かれてるじゃないですか。
あれを観てですね「オレもこれやりたい!」と思ったんですwwww
マスター同様、名東店の規模ですと「労働力」としては僕一人で充分賄えます。
しかし同時にちょっと限界を感じていたのも確かでした。
日々の仕事は充分こなせても、お店としての「発展性」みたいなものはもうなかなか望みようがありません。
この辺でちょっと新しい風を入れたいと思っていたのも確かではありました。
そして、基本的には好きな仕事を好きなようにさせてもらって30年近く経ち、仕事に関しちゃこれ以上何を望むなんてことはなかったのですが、映画を観て、まだ全くやってないことがあったことに気がついたのです。
それは「人を育てる」ということです。
これまでも何人かアルバイトをしてもらった方はいらっしゃるのですが、皆さん優秀な人ばかりでしたので、「育てる」というよりも「助けてもらった」という実感の方がはるかに大きかったのです(無能な店長だw)。
そもそも僕には「店を大きくしたい」とか「店舗を増やしたい」というような願望は全くありません。
仕事が忙しくなって遊ぶ時間がなくなるなんて、本末転倒も甚だしいですから。
しかし僕もそろそろ「次の世代へのバトンタッチ」みたいなことをしてもいいのかもな・・・と考えました。
それで早速翌日にブログでの告知と、店頭に募集看板を設置しました。
2015年の秋のことです。
しかしアルバイト希望の人はサッパリやってきませんでしたwww
特に若い人にこだわったわけではなく、僕の第一義的な目的は「お店に新しい風を入れたい」ことでしたので、主婦でも学生さんでもどちらでも構わなかったのですが、サッパリ応募がありません・・・
それでも年が明けて2月の初めくらいに問い合わせが一件あったのですが、その方(40代と思しき女性)は面接の時間に5時間遅れてくるという離れ業を演じ(その度胸のよさにはちょっとした感動を覚えましたがwwもちろん不採用です)、若干求人に関しては心が折れかけていた時にフラリと店にやってきたのがバイトちゃんだったのです。
*これは面接の時に撮らせてもらった画像です。
第一印象は「とにかく大人しい子」でした。
声も小さく、表情も固く、そのうえ反応も薄い子でした(笑)
しかしまぁ面接だし緊張してるよな・・と思いつつも、その週の週末から早速働いてもらいことになりましたが、アルバイトがはじまっても僕の印象はほとんど変わりません(笑)
とにかく大人しい。
気を抜くと店内のどこにいるのかも分からなくなるwww
でもアルバイト初日の終業時に僕は彼女にこんなことを言ったことを憶えています。
「僕はあなたと多分相性がいいであろうと感じてます(最初は敬語使ってたww)。僕は要領とか調子のいい人間をあまり好まないのです。なので『うまくやろう』とか『早くやろう』とかそんなことは考えないでください。分からないことは何でも『分からない』と僕に聞いてきてください。同じことを何度聞いてきても僕はそれで怒ることはありません。そのかわり、自分の判断でお客さんに不正確なことを言うことだけは避けてください」
するとバイトちゃんはこんなことを言いました。
「わたし・・こんな風に無愛想ですから前のアルバイト先でもお客さんに怒られたりしたんですけど・・今日は楽しかったです。これからもよろしくお願いします」
素直でいい子だな・・と思いました。
手が遅い人が、反復することによって手を早くすることは可能です。
不器用な人が、鍛錬によって作業に習熟していくことも可能です。
しかし「素直で心根がいい」というのは代替の効かない美点です。
「性根の悪い人間」はどんなに器用で要領が良くても「心根のいい人間」にはなりませんから。
しかしそれでも一筋縄にはいきませんでした。
だって自分から全然お客さんに話しかけられないんですから(笑)
僕は緊張して立ち尽くしてるバイトちゃんの背後から、「ほら!!お客さんに『よろしかったらご試着どうぞ』でも『いいお天気ですね』でも何でもいいから話しかけて来い!!」と何度けしかけたかわかりません。
すると彼女はその都度、蚊の鳴くような声で「よろしかったらご試着ください・・今日はいい天気ですね・・」と僕の言葉を反復するのでした(笑)
ただし一緒に働くうちに、結構芯には強いものがあって、案外頑固な面があることにも気が付きました。
最初の驚きは皆さんにもご記憶にありますよう、他の大学の卒業制作展を見に行くために原付で神奈川まで往復したことです。
これにはさすがに僕も度胆を抜かれましたし、多くのお客さんに親しみを持ってもらうきっかけになったのですが、これだって本人に特に「チャレンジしてみよう!」とか、「ネタとして面白いかも?」みたいな思惑があったとは思えません。
恐らく「新幹線は高いから原付で行こう」とかその程度だったんだと思うのです(笑)
そしてそんな人々を驚愕させた行為の後でも、彼女の接客が急激にひと皮剥けたなんてことはもちろんありませんでしたw
相変わらず「よろしかったらご試着ください・・」の後、お客さんに「ありがとう」と言われるとそのままトボトボ戻ってきます。
その都度「コラコラすぐ帰ってくんな!!『バイクカッコイイですね!』とか『どこかツーリング行くんですか?』でもなんでも繋げてこい!」と背中をどやしつけました。
まぁそれでも僕の中には特に失望も焦燥もありませんでした。
彼女は彼女なりに一生懸命なのがちゃんと伝わってきたからです。
ある時こんなこともありました。
その年の春モデルのなかでは、アメニタジャケットの売れ行きが僕の予想より鈍く、僕がそのことを嘆いた日のことです。
バイトちゃんが自らのブログでアメニタジャケットのことを紹介してくれたのですね。
僕は「あぁ・・この子はこの子なりにこのお店のことを一生懸命考えてくれてるんだな」とちょっとグッときたのです。
正直言いますと、ちょっと涙ぐみさえしましたwwww恥ずかしいからあんま言いたくないんですけどwwwww
そしてちょっとづつ・・本当にちょっとづつですけど、お客さんに話しかけられるようになってきました。
最初の頃は僕が裾上げしている時などでも、店内は100%の沈黙が支配して僕をヤキモキさせたのですがw、段々とお客さんと談笑する声が聞こえるようになってきました。
そしてそんな時間に彼女なりに商談をまとめ、「店長・・レジお願いします」と声をかけてくることも増えてきました。
「人は必ず成長する」
そんな事実を目の当たりにした1年間でした。
それもこれも、お客さんが本当に彼女のことを可愛がってくださったからに他なりません。
年齢的なことも恐らくあるでしょう。
彼女の年齢は、ウチのお客さんの平均年齢からするとちょうど「息子さん、娘さん」と同年代なのです。
よく「ウチの娘と同じ歳だよ」と目を細める常連さんの姿を目にしました。
しかし何よりも特筆すべきなのは(これも彼女の美点なのでしょうけど)「人に可愛がられるフェロモン」が普通の人よりも多めのなのは間違いがないようです。
素直で、真面目で、人には可愛がられるこの美点があれば、彼女はきっと社会に出てもちゃんとやっていくと思います。
多分あまりの要領の悪さにイライラしちゃう大人にも出会うかもしれませんがww、それでも世間の大人は辛抱強く彼女のいいところを伸ばしてくれることと思います。
ナゼならば僕自身がそうやって大人になってきたからです。
僕は彼女と働きながらシミジミよくこう思いました。
「僕が彼女の歳くらいの時、世間の大人の人たちは今僕が感じてるようなヤキモキ感を僕に対して感じてたんだろうな」と。
それでも僕はちゃんと周囲の人に育ててもらいました。
彼女がウチでアルバイトをしたのはたったの一年間です。
正直クシタニスタッフとしては半人前どころか、まだまだ1/16人前くらいですw
でも僕の目的は、「クシタニスタッフとして」とか「クシタニ名東店の戦力として」みたいな即物的なものを身に付けてもらうことじゃありませんでした。
彼女がこれからどんな人生を送るにしても、どこかで道に迷った時に、この店で憶えたことが少しでも指針になってくれれば僕の役割はそれで全う出来るんだろうと思います。
そして「バトンを渡す」とはまさにそういうことを言うんだろうとも思うのです。
もちろん僕自身にも大いに気づきや学びがありました。
人間同士は鏡です。
彼女が出来ていないことは、恐らく僕自身が出来ていないことなのです。
そういう視点を持つことが出来たことで、遅ればせながら僕も彼女にまたちょっとだけ大人にしてもらいました。
ただ少々反省点があるとすれば、ちょっとばかし僕は彼女を甘やかし過ぎたんだろうな・・・ということですwww
恐らく僕に本当の娘がいたら、「無制限に甘やかすバカ親」になっていたことは恐らく間違いないでしょう(笑)
案外それが僕がこの1年間で得た一番の「教訓」かもしれませんw
さて。
すっかり長文になりましたが、アルバイトの最終日前日、常連さん達に集まってもらって送別会が開かれました。
年度末の忙しい時間を割いて、大勢のお客さんに集まっていただいて本当に感謝しています。
そして最終日も大勢のお客さんがお越しくださいました。
京都店のブログばっかり読んでて、僕のブログはサッパリ読まないバイトちゃんのことですから恐らくここも読んでないでしょうwww
それでも僕はこの場を借りて伝えます。
1年間ウチで働いてくれてどうもありがとう。
言ってることにもやってることにもイマイチ整合性も説得力もない店長でゴメンな。
酷いセクハラも反省してるよww
バイト二回目に「彼氏いるの?」とか聞いてスマンかった。
オレも、そして大勢のお客さんも、キミのことを忘れず、キミが幸せになることを祈ってるよ。
サヨナラだけが人生だ!
あ〜〜ヤダヤダ・・・
だからオレは春が嫌いなんだよ!!!
- 2017.03.31 Friday
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- 08:37
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- by kushitanimeit