翌朝、一応「6時起床7時出発」をとりあえずの目標にしましたが、目覚めてみれば6時半。
外は相変わらずの雨模様です。
洗顔のついでにまた露天風呂に浸かり頭と身体を目覚めさせます。
さすがふかふかの布団の効果は大きく、グッスリ眠った分体力も回復しています。
(とは言っても、前日は45kmくらいしか走ってないんですけどねテヘペロ)
本当はキャンプで食べるつもりだった朝ご飯用のオニギリやジャムパンをモサモサと食べ、本日の予定の確認です。
まずはここから乗鞍エコーラインを通り、乗鞍スカイラインへと抜け、平湯から高山へ降り、僕はそこから輪行、Nクンは高山のどこか安宿を見つけて宿泊・・・というプランです。
このルートの最大の肝は、この宿から乗鞍の最高地点(標高2700m)までのおよそ20kmに及ぶ登りです。
平均斜度が6.3%くらいですので、押しが入るような激坂ではありませんが、楽な行程でないことは確かでしょう。
出発前に読んだ、このエコーラインを自転車で走った人のブログの記録や、僕の脚力などから計算して、頂上までおよそ3時間という目算です。
ではそろそろ出発しましょうか。
宿の食堂には薪ストーブが燃え盛っておりました。
ああ・・離れがたいwww
突然の宿泊にも関わらずとても親切にしていただいた民宿にはホントウに感謝です!
皆さまも乗鞍方面でお泊りに悩んだら「ロッジ蘭山」をぜひどうぞ!
7時出発予定だったのに、なんだかんだと8時半・・・
「さぁ!行くぞ!!」の気合のポーズはいいんですけど、写真ボケボケっすねwwww
まるで行く末を暗示してるかのようですw
ちなみにこの宿のすぐ目の前が、自転車乗りの聖なるイベント「乗鞍ヒルクライム」の出発点でもありました。
世の中にはお金を払ってわざわざ坂を登る変わったサイクリストが大勢いるようですけど、僕には理解不能な世界ですww
ではゆるゆると出発しましょう。
このルートの序盤は5〜6%の斜度ですので、それほどキツい思いをせずに登っていけます。
とりあえず人工物のあるところまでは休憩無しでいこう・・・と走り続けて1時間。
前方に立派な建物が見えてまいりました。
「三本滝ゲート」です。
マイカーはここからは通行禁止になるポイントです。
しかし近づくにつれて何だか不吉な看板が見えてまいりました・・・
な・・なんと!!
悪天候のため、乗鞍スカイラインは「自転車も通行止め」とのことです。
ネットの情報などで「そういうこともあるよ」とは知っていましたが、坂道を1時間を登ってきた身からするとさすがにショックは隠しきれません・・・
お願いだからこの情報、宿で知りたかったよw
なぁ。そこの子狸よ。お前もそう思わないか?
乗鞍を超える道の呼称は、長野側は「エコーライン」で、岐阜側で「スカイライン」となります。
したがいまして「スカイライン」が通行止めでもエコーラインは通行可能で、とりあえず最高地点である畳平までは行けます。
しかしそこから岐阜県側には抜けられませんので、必然的に同じ道を引き返して来ざるを得ません。
そこでまた二人による首脳会談の開始です。
この時点で我々の取りうる選択肢は以下の三つでした。
(1)同じ道を引き返し、松本まで降り、僕は松本駅から輪行にて帰宅。Nクンは松本からR19にルートを変えて南下。
(2)同じ道を引き返し、僕は松本に下り輪行。Nクンは沢渡まで登って高山行きのバスで輪行。
(3)同じ道を引き返し、上高地方面へと登り安房峠を超えて高山へ。
Nクンの希望としては高山へは行きたい(そしてそこからせせらぎ街道を通って名古屋まで南下したい)とのことですので(1)は却下です。
しかし岐阜側に抜けるためには安房峠以外にルートはありません。
僕は以前オートバイで散々安房峠は超えていますので、自転車で楽に超えられる峠でないことは充分知っています。
しかも安房トンネル開通後、オートバイですらほとんど通っていないため路面状況がどうなっているのかも分かりません。
しかし時刻はまだ9時半。
松本まで下って輪行して帰るってのもあまりに芸がありません。
Nクンにしても沢渡からバス輪行ってのに味気無さを感じているようです。
「安房峠・・・超えるか・・」
どちらからともなくそんな空気になりました。
多分一人だったらお互いにその選択肢はないでしょう。
でも二人なら「まぁ行ってみるか」という気になります。
そうと決まればさっさと出発です。
もちろん雨は全く止む気配はありませんが、もういい加減気にならなくなりました。
ワハハハ!もうなるようになれだ!
昨日の待ち合わせ場所まで戻り、R158を上高地方面へと登っていきます。
時刻は10時半でしたが、もちろんこの頃には朝ご飯なんて綺麗に消化されていますので沢渡にて早めのお昼ご飯です。
もうね。
どんなに食べても腹が減りますよww
若者はこの旅で初めて信州そば食べたそうです。
たまには名物も食べなさいよ。
腹が満たされたところで出発しますが、ご存知の通りここからのR158はトンネルの連続です。
バイクでもあんまり気持ちのいいものじゃないトンネルの連続ですが、自転車だともう生きた心地のしない恐怖の連続です。
とにかく音が反響しまくりますので、車が前からやってくるのか後ろからやってくるのか分かりませんし、このルートは大型観光バスやトラックが多いので気が抜けません。
特に我々のようにパニアバッグ装備ですと、ちょっとでもふらついたら引っかけられる可能性大です。
いくら雨の中の坂道走行でもトンネルを抜けると心底ほっとします。
沢渡から30分ほど登ると、上高地と平湯方面への分岐点になります。
安房峠はここからが本格的な登りになりますので、そこにある小さな茶屋(兼中の湯温泉の受付)で小休止します。
そこの茶屋の中には一人の女性ライダー。
上から下までクシタニウエアに身を固めています。
外を見ると京都ナンバーのグラディウス。
「あの・・もしかして・・?クシタニ京都店のお客さんですか?」と声をかけると、「あら!?名東店の店長さん?」とのお返事。
あらぁ!なんとなくお見かけしたお顔だと思っていたら、HMSなどのイベントなどで何度かご一緒してる方じゃありませんか!
まぁ!なんという偶然でしょう!
でも案外旅先じゃこんなことよくあるんですよねー。
ここへは「卜伝の湯」へと入りに来られたとのことです。
しかしまぁ人のことは言えませんが、この雨の中お好きですなぁ・・・
彼女が温泉に入りに行かれた後に、入れ替わりで来られた明神小屋でアルバイトをしているという綺麗なお姉さんと談笑しているうちに30分以上休憩してしまいました。
このお姉さん、入浴前からビールを飲んでいるような若干ヤサぐれた雰囲気の美人だったのですが、Nクンの旅に興味津々なようで質問攻めにしています。
こんな時僕は若い男への嫉妬心をどーしても隠せませんwwww
ちくしょー!若いからって調子に乗るなよコノヤローw
では嫉妬をエネルギーに変えて出発です。
ここはオートバイでも人気ルートでしたのでご存知の方も多いかとは思いますが、この地点からヘアピンの連続になります。
しかしヘアピンが多いということはその分直登は避けているわけで、斜度はイメージほどキツくはなく何とかかんとか登っていきます。
峠の取り付きから頂上まではおよそ8km。およそ1時間の行程(予定)です。
ジリジリ登ります。
よろよろ登ります。
僕はいっぱいいっぱいでしたが、若者は後ろからこんな写真を撮ってくれるゆとりはあったようです。
老体のペースに合わせてもらって申し訳ないことですな!
ヘアピンの連続を超えれば頂上まではあと少し!
予定通り1時間で頂上まで到達!!
先ほどの嫉妬心も忘れガッチリと握手。
バンザーイ!バンザーイ!!
やっぱりこっちのルート取ってよかった!
なかなかの達成感です!!
さぁ!ここまで来ればもう後は下るばかりです。
寒いし視界は悪いしで、写真撮ったらこの場所に用事はありません(昔あった茶店も跡形もなくなってましたし・・・)。
まずは急いで平湯温泉まで下ります。
途中クロスバイクに乗った3人組のチャリダーとすれ違いましたが、この安房峠、明らかに岐阜側から登った方がキツそうです。
もう「ガンバレ!」としか言いようがありません。
しかしこの斜度は下りでこそ気が抜けません。
特に雨で制動距離が長くなっていますので、平湯までは冷や汗ものの走行が続きました。
平湯のバス停で小休止しましたが、そこの足湯でたまらずにかじかんだ手を温めます。
あ〜〜生き返るわぁ。
そして辛抱たまらず足も温めます。
充分予想されたことではありますが、この後に濡れた靴下をもう一回履く不快感半端なかったですw
それでもここでアンパンも食べてエネルギーも回復したぞ!
ここからは2〜3km平湯峠への登りがありますが、そこを超えれば高山まで一直線の下り道!
30kmの距離を1時間で駆け下り、まずは高山市内の銭湯へ。
高山は古い街だけあってか、街中にも銭湯が幾つかあり、僕らが選んだのはここ。
「鷹の湯」さんです。
ここがまた昔ながらの銭湯という感じで、地元の人で賑わっています。
銭湯の雰囲気も最高でしたが、この周辺の街並みがまたバツグンでした!
高山の駅前からはちょっと離れていますので、ほとんど観光客も見かけない静かな雰囲気で、高山という街の魅力をまた一つ知りました。
ここから高山駅まではほんのあと2〜3km。
風呂から上がるとタイミングよく雨はほとんどやんでいました。
全て乾いた衣服に着替え、お風呂で暖まった身体を冷やしながら古い町並みを自転車で走るのは、旅の終わりの高揚感も相まってもう最高に気持ちよかったです。
Nクンは駅の近くのゲストハウスに宿が取れたようですので、まずは駅まで二人で行き、僕が輪行の段取りをしている間にNクンはゲストハウスのチェックインを済ませ。再び駅前で合流。
ビールと高山ラーメンで別れの祝杯を上げました(疲れで目が据わってますねww)。
今回は天候には全く恵まれず、とことん「思い通りにはいかない旅」で、僕のサイクリング史上・・いや、旅史上かなり上位にランクされるくらいハードでヘヴィーな旅だったのですが、同じくらい上位にランクされるほどエキサイティングで面白い旅でもありました。
多分一人だったら心折れることばかりだったと思います。
しかしアクシデントにも笑ってられたのは二人だったからこそです。
この老体チャリダーに付き合ってくれた、(親子ほども歳の離れた)Nクンに心から感謝です。
本来、この週のお店のお休みは木曜日だけでしたので一日余計に休みをもらって遊んでいたことになります。
しかしこの機会を逃したら、Nクンとこんな濃密な旅をする機会は恐らくこの先ほとんどなくなってしまっていたことでしょう。
再来年の春には大学院を卒業するNクンにしても、中部エリアへこれだけの長い旅をすることはもうこの先なかなかないことと思いますし。
前々からの「いつかは一緒に走りたいな」という思いを実現するために、ちょっとだけワガママを通した形になりましたが、人生「いつかやりたい」と思っていたことを本当に実現するためにはちょっとした無理が必要な時もあるのです。
一日お休みを頂けば、それだけお客さんには迷惑をかけますし収入減にも繋がります。
それでも僕はこの二日間のことをけっして忘れないでしょう。
そして今後もNクンと会う度に「あの時は大変だったな〜」と語り合えるのはとても素敵なことだと僕は今しみじみ思っています。
Nクンは僕と別れた後、せせらぎ街道を経由し、今日(27日)の晩にセントレアから発つ飛行機で福岡まで帰るそうです。
Nクンにとってもこの旅が楽しい思い出になることを心から願ってやみません。
同時に、彼の青春の物語の中に僕が登場人物として刻まれるのなら、こんな幸せなことはありません。
最後まで読んでくださってありがとうございます。