さて、ゴアテックスメンブレンの基本的な構造と、ゴアテックスという素材の持つごくごく基本的な特徴は前の記事の通りですので、今回はもう一歩進んで服(もしくはテントなど)の素材としてのゴアテックス、すなわち「ゴアテックスファブリックス」について解説いたしましょう。
前に書きました通り、ゴアテックスのフィルムそのままではペナペナで素材にはなりません。
そこで何がしかベースになる布(ナイロンが多い)にラミネートするわけですが、このラミネートされる側の生地を「ベースファブリックス」と呼称いたします。
ごく初期の「第一世代」と言われるゴアテックスは、メンブレンをベースファブリックスにラミネートした二層構造でした。(下図参照)
しかしこの構造には致命的な弱点がありました。
と、言いますのもメンブレンが剥き出しなため、皮脂などの油脂成分がゴアテックスの特徴でもある微細な穴に詰まってしまい、透湿性をスポイルするだけでなく、詰まった汚れが毛細管現象を起こし、防水性までも低下させてしまう事態が起こったのです。(下図参照)
これではせっかくのゴアテックスの高性能が発揮されません。
そこでゴアテックス社ではすぐさまこれに裏地を付けたファブリックスに改良します。
これが一般的に言われる「3レイヤーゴアテックス」というわけです。
この構造ですとゴアテックスは皮脂汚れなどに影響されることなく性能を維持することが可能になったのですが、世の中の事象というのは必ず得る物があれば失うものもあるトレードオフの関係にあります。
ゴアテックスとてそれと無縁ではありませんでした。
3レイヤーは耐久性にも優れ、着心地もいいのですが、生地そのものが嵩張ってしまうという弱点がありました。
時々「ゴアゴアしてるからゴアテックスって言うんだよね?」と、返答しようかどうしようか困惑するようなご質問も頂いたりするのですが(笑)、あながち根拠のないことでもないんですよね・・・
そこで収納性を重視したい製品などには、第一世代の「2レイヤー」構造のものにメッシュなどの裏地を付けた構造のものを採用しました。(クシタニのK-3007などがそうですね)
構造としては下図のような感じですね。
上記のことから「2レイヤー」というと裏地も何も付けていない「第一世代」のものと混同されがちなのですが、実際に「2レイヤー」と呼称する場合は上図のような構造のものを指すことが多いことを念頭に置いていただけると分かりやすいかと思われます。
さて、このようにウエアメーカーは自社の製品の狙うところや、コスト(3レイヤーの方が高価)などを考慮しながら適材適所「3レイヤー」と「2レイヤー」とを使い分けていたわけですが、どちらにしてもそれぞれに欠点を抱えていた状態ではありました。
3レイヤーの欠点が「収納性」ならば、2レイヤーの欠点はその「着脱製の悪さ」でした。
厳密に言えば耐久性も2レイヤーの方が劣るんでしょうけど、通常の使用ならばそう問題になる差でもないでしょう。
むしろ皆さんご経験がおありかと思うのですが、雨が急に降ってきて、慌ててカッパを着ようとすると裏地のメッシュがヨレていたり、どこかに引っかかって非常に着たり脱いだりがし難い・・・という欠点の方が致命的でした。
これは3レイヤーが特殊な接着剤で裏地を隙間無く貼り付けているのに対して、メッシュの裏地はフローティング構造ですのでいたしかたない部分があるんですよねえ・・・
大体カッパを着なきゃいけない状況の時って1秒を争っていますので、ちょっとした着脱製の悪さが非常にイライラの原因になってしまいます。
さぁ、その両方の弱点を解消して、双方の「いいとこ取り」をした構造は出来ないもんなのか??
そんな要望から生まれてきたのが「パックライト」というわけなんですね!
ようやく本題に辿り着きました。
長文読破お疲れ様です。
では長くなりましたので、肝心のパックライトについてはまた次回に〜。